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中年ソムリエのワインひとりごとVol1

フランス・ブルゴーニュ地方。そのワイン造りの歴史は遠くローマ時代にまで遡る。ゲルマン民族大移動の時期、もっとも弱小であったブルグント族が、この荒涼とした荒地にたどり着いて定住した事からこの土地に名前が付いた。ただ歴史上明確にその姿を現したのは中世に入ってから。1098年、贅の限りを尽くしたベネディクト派と袂を分かった、厳格な戒律を旨とするシトー派を創設したのが、ブルゴーニュ出身のロベール師。彼はモレームで修道院長を務め、彼の元で若い修道僧の修行として、荒れた土地の開墾が行われぶどうが植えられた。キリスト教の祭祀において、既に赤ワインは「聖なる血」として欠かせないものとなっており、次々とぶどうが植えられていったのである。
 19世紀初頭、皇帝ナポレオンの大令により、修道院の所有する広大なぶどう園が、土地を持たない小作農に分け与えられた.これは彼の庶民に対する人気取りでもあり、かつ宗教の力よりも、世俗の皇帝の権力がより強い事を知らしめるためのものであった。これにより「シャンベルタン」「ミュジニー」「クロ・ド・ヴージョ」といった、当時すでにヨーロッパ貴族社会において名声を博していた名立たる銘醸特級畑が、数多くの所有者の手に委ねられることとなったのである。DRCのロマネコンティやラターシュのようなモノポール(単一生産者の独占所有畑)は、ブルゴーニュにおいて非常に稀有な例となっているのもこのためである。
 このように、現代においてもブルゴーニュ地方には、数多くのぶどう畑が広がり、多数の生産者、ドメーヌ、ネゴシアンが存在する。親子三代にわたってワインに携わっているケースも多々見られ、一族郎党、いとこや甥、娘婿にいたるまで、さまざまな形でワイン産業に従事しているのである.
 今回紹介する「メゾン・ニコラ・ポテル」もそのような生産者の一人である。現当主のニコラ・ポテル氏は1969年生まれ、新進気鋭といってよい年齢であるが、その経験はすでに25年程になる。当店「ラ・グランターブル・ドゥ・キタムラ」に、この3月11日に来訪し、彼のワインと共にディナー会を開催する事となった。詳細は別途記載してあります。彼の父親は名門「プース・ドール」にて醸造長を長く務めたジェラール・ポテル氏。父の薫陶を受けて育ち、20代をコント・ラフォンやジョルジュ・ルーミエといった名手の元での修行で過ごしている.彼の哲学はひとえに「テロワール」。畑の明確な個性、差異をいかに有りのままに表現するかがもっとも重要であり、そのためプース・ドールにもビオ・ロジックを導入している。良いぶどうは樹齢の古い良い樹から、良いぶどう樹は、良い畑から、良い畑は化学肥料や農薬を使用しない、自らの力で回復する元気な土である事…。今やヨーロッパにおいて完全に主流となったビオの概念をいち早く取り入れたのもこのためである。
 南北に連なる「コート・ドール」、この狭い黄金の丘に広がる様々な畑、道一つ隔てただけで、日の当たり方、斜面の向き、斜面の角度、風の通り、水はけが微妙に、時には大きく違ってくる。このミクロの差異をボトルの中に表現する、それがブルゴーニュ人に流れるDNAであり、ニコラもこの血で育まれたのである。

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